フリーランス・個人事業主が今すぐ確認すべきリスクと対策【2025年版】
TL;DR(要点):フリーランス新法は保護強化が目的ですが、実務では①契約手続きや証跡管理の負担増、②発注側のコンプライアンス過敏による発注控え、③長期案件の中途解除リスクの可視化(30日前通知)などの副作用があります。フリーランス側は「契約条件の書面化」「支払期日の把握」「証拠保存」「6か月超契約時の運用」を即整備しましょう。
目次
- 法律の概要(要約)
- フリーランス新法の主なデメリット(現場目線)
- フリーランス/個人事業主が気を付けるべきポイント
- よくある誤解と正しい理解
- すぐに使えるチェックリスト
- よくある質問(FAQ)
- 実務Tips例
法律の概要(要約)
- 正式名称は**「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」。2024年11月1日施行。目的は取引の適正化と就業環境の整備**。
- 取引条件(業務内容・報酬・支払期日など)を書面または電磁的方法で直ちに明示する義務。口頭のみは不可。
- 受領日から60日以内の「できる限り短い期間」で支払期日設定&期日内支払いが必要。
- 1か月以上の委託で適用される7つの禁止行為(受領拒否、報酬減額、返品、買いたたき、購入・利用強制、不当な利益提供要請、不当なやり直し)など。
- 6か月以上の委託では、育児・介護との両立配慮、ハラスメント対策体制、中途解除・更新拒絶の30日前予告等が求められる。
- 違反が疑われるときは、公取委/中小企業庁/厚労省へ申出が可能。申出を理由とする不利益取扱いは禁止。
フリーランス新法の主なデメリット(現場目線)
1)契約・証跡管理の負担増(スピード低下の懸念)
条件明示が必須になったことで、契約書作成・条件確認・記録保存の手間が増えます。小規模案件でもやり取りの初手から**「文書化」が前提**になり、着手のスピードが落ちる可能性。
→ 副作用:単発や小口の案件ほど、打合せ→合意→着手のリードタイムが延びやすい。
2)発注側のコンプライアンス疲れ→発注控え
発注企業は、60日以内支払い、7つの禁止行為の遵守、ハラスメント体制等の対応が必要。特に中小企業は社内整備コストが重く、外注抑制(内製化)や、従業員を雇う取引先の優先に傾く場合があります。結果として、フリーランスへの新規発注が減るリスク。
3)長期案件の「30日前予告」=安定化と同時に硬直化
6か月以上の継続委託では、中途解除・更新拒絶は原則30日前の予告が必要に。見通しは立ちやすくなる反面、柔軟な切替がしづらいと感じた発注者が長期化を避けるケースも。
4)適用範囲の判断ミスによるトラブル
この法律の「フリーランス」は、従業員を使用しない事業者(週20時間以上・31日以上の雇用を見込む者は「従業員」に該当)を想定。適用の有無の勘違いが、契約設計ミスや不適切対応の原因に。
5)違反申出・公表リスクへの神経戦
違反が疑われれば申出→調査→指導・勧告→命令・公表→罰則の流れがあり得ます。企業名公表のダメージが大きいため、発注側が慎重化→発注保留の判断を取りやすくなります。
フリーランス/個人事業主が気を付けるべきポイント
① 「取引条件の書面化」をあなた主導で
- 発注側が動かないときは、自分から条件明示のたたき台(メール/見積兼発注確認書)を出しましょう。
- 9項目(給付内容、報酬額、支払期日、双方の名称、発注日、受領日・場所、検査完了日(検査がある場合)、現金以外の支払方法の要件)を盛り込む。
② 支払期日=「受領日から60日以内」を可視化
- 見積・合意時に納品・検収・受領の定義と日付管理を明記。
- 請求書は期日と支払方法を大きく記載。遅延時は催促テンプレで迅速にリマインド。
③ 証拠は“時系列”で残す
- 契約書・メール・チャット・ファイルの版管理。
- 仕様変更・要件追加は差分が見える形で記録。
- ハラスメントや不当要求が疑われる場合、事実関係のスクショ・ログを保存。
④ 1か月超・6か月超でルールが切り替わる
- 1か月以上:受領拒否・報酬減額・買いたたき等7つの禁止行為が適用。
- 6か月以上:30日前予告、両立配慮、ハラスメント体制に関連する規定が動く。契約期間の見直しや自動更新条項の扱いに注意。
⑤ あなたが外注するときも「条件明示義務」
- フリーランス同士の受発注にも条件明示義務は及びます。下請けに業務を振る際、あなたが発注者として義務を負う点に留意。
⑥ トラブル時は“まず相談”で早期収束
- フリーランス・トラブル110番(弁護士無料相談)を使う。
- 申出制度(公取委/中小企業庁/厚労省)も選択肢。申出を理由とする不利益扱いは禁止。
よくある誤解と正しい理解
- 誤解:「契約書がなくても、チャット合意でOK」
正解:口頭のみは不可。書面または電磁的方法で条件明示が必要。 - 誤解:「下請法が対象外なら、この法律も関係ない」
正解:本法は資本金要件なし。従業員を使用する発注事業者なら広く対象。 - 誤解:「フリーランス側には義務はない」
正解:他のフリーランスに再委託する場合は、あなた自身が明示義務の主体になります。 - 誤解:「支払いは“翌々々月末”でも合意していればOK」
正解:受領日から60日以内の「できる限り短い期間」で期日設定が必要。
すぐに使えるチェックリスト
- 見積・合意文面に9項目が入っている
- 納品/検収/受領の定義と日付が明確
- 支払期日が受領日から60日以内
- 1か月超の案件で7つの禁止行為を周知
- 6か月超の案件で30日前予告や両立配慮の運用を確認
- 仕様変更・増額は書面orメールで差分管理
- 外注(再委託)時に自分が明示義務を負うことを理解
- トラブル時の相談窓口(110番/申出フォーム)をブックマーク
よくある質問(FAQ)
Q1. 請負と準委任で運用は変わる?
A. 本法の「業務委託」には物品製造・情報成果物作成・役務提供が含まれ、契約類型を問わず条件明示・支払・禁止行為等の規定が及びます。
Q2. 「従業員」の線引きは?
A. 週20時間以上・31日以上の雇用見込みで「従業員」に該当。派遣受け入れでも要件を満たせば「従業員を使用」に該当します。
Q3. 自動更新契約の場合の30日前予告は?
A. **更新も“新たな委託”**と扱われ得ます。6か月超の継続委託では、更新拒絶・中途解除の運用に注意。
実務Tips例
- NDA(秘密保持)+基本契約+個別契約の3点セット化で、毎回の条件明示をスムーズに。
- 検収フローの設計(受領日=支払期日の起算点)を、契約書で明文化。
- 小口案件こそテンプレ(見積兼条件明示フォーマット)で時短&抜け漏れ防止。
- 証跡はクラウド一元管理(日付・版・決裁者)— 後日の申出・相談の裏付けに。
最後に
フリーランス・個人事業主が、外部に委託するケースもあります。
そのため、フリーランス新法は、受ける側だけではなく、発注する側としての立場でも理解していきたいところです。
